山岸塗装

INDEX 01 — STORY

なぜ、積層痕と
戦うことにしたのか。

家電の量産塗装で長年腕を磨いた職人が、どうして3Dプリントの表面処理という、まだ名前もない仕事に専念することにしたのか。一本の相談から始まった、下地をめぐる物語です。

CHAPTER 01

毎日、同じ色を、
同じ艶で。

The Ordinary Days

山岸塗装を始める前、山岸信之の一日は、色に始まり、色に終わっていました。持ち場は、家電の量産塗装。工場のラインを流れてくる筐体に、決められた色を、決められた膜厚で、来る日も来る日も吹き付ける。一個目と一万個目が、寸分違わぬ艶であること。それが、その仕事に求められる唯一のことでした。

派手さはありません。誰かに褒められる仕事でもない。塗り上がった製品は、当たり前の顔をして箱に詰められ、家電量販店の棚に並び、誰かの家のリビングに置かれる。その表面が均一で美しいことに、気づく人はいません。気づかれないことこそが、量産塗装の完成形だからです。

けれど、毎日同じ色を塗り続けるうちに、体は覚えていきました。塗料がどう流れ、どう乾き、どの距離でどう乗るのか。均一な膜をつくる手つき。段取りの組み方。治具の使い方。それは、一点ものを美しく塗る技術とは、まったく別の筋肉でした。「同じ品質で、数を仕上げる」——量産の精度が、いつのまにか体に染み込んでいたのです。

FIG.01
均一な艶で仕上げられた車体
均一に、正確に。それが量産塗装の日常だった。THE DISCIPLINEPhoto: cmreflections / Unsplash
CHAPTER 02

その造形物には、
縞があった。

The Call

きっかけは、知人からの一本の相談でした。手のひらにのる、樹脂の造形物。3Dプリンターで出力したという、ある製品の試作。手に取ると、表面にうっすらと横縞が走っていました。層を積み重ねてつくる、3Dプリント特有の跡——積層痕です。

「これ、量産品みたいに綺麗に塗れませんか」。知人は言いました。そして、続けた言葉が、山岸の胸に刺さりました。

「塗装をやってくれる店はあるんです。でも、この積層痕を分かってる人がいない。造形はできても、仕上げは単色止まり。誰も、最後の一歩をやってくれないんですよ」— ある試作の相談者の言葉

その瞬間、山岸は気づきました。塗装はできても3Dプリントの下地を知らない塗装店。造形はできても仕上げは苦手な出力サービス。その二つのあいだにぽっかり空いた空白——そこに必要なものは、自分が毎日やっていることそのものだ、と。均一に、正確に、数を美しく塗る。量産塗装の精度こそが、この新しい世界に決定的に欠けているものでした。

FIG.02 — THE GAP
ガレージで車体を仕上げる作業
造形はできる。だが、その先の仕上げに空白があった。AWAITING ITS FINISHPhoto: claritycoat / Unsplash
CHAPTER 03

樹脂は、
鉄板とは違った。

The Trials

思い立ってすぐ、うまくいったわけではありません。自動車の鉄板と、3Dプリントの樹脂は、まるで別物でした。素材ごとに塗料の食いつきが違う。溶剤に弱いものもある。そして何より——積層痕は、塗料をいくら重ねても消えない。厚く吹けば、細かな造形ディテールが埋まってしまう。塗るほどに、縞は醜く浮かび上がることさえありました。

テストピースを、何枚も塗りました。研いでは吹き、吹いては削り。失敗した造形物が、作業台の隅に積み上がっていきました。洗浄が甘ければ塗料が弾き、脱脂を怠ればムラが出る。3Dプリントの塗装には、模型とも、クルマとも違う、独自の勘所があったのです。

それでも、手を動かし続けました。なぜなら、あの言葉が忘れられなかったから。「誰も、最後の一歩をやってくれない」。ならば、自分がやる。試行錯誤の日々は、地味で、報われるかも分からないものでした。けれど職人は、うまくいかない理由を一つずつ潰していくことを、苦だとは思わないのです。

FIG.03
研磨を繰り返す手元
研いでは吹き、吹いては削る。TRIAL & ERRORPhoto: mazinomron / Unsplash
CHAPTER 04

答えは、毎日やっていた
下地にあった。

The Revelation

転機は、ある一枚のテストピースでした。積層痕を #800 の紙やすりで面ごと研ぎ落とし、プラサフを厚めに吹いて微細な段差を埋め、#1200 で水研ぎをかける。それは、自動車補修の現場で当たり前にやっている、ごく basic な下地の作り方でした。その上に塗料を乗せたとき——縞は、跡形もなく消えていました。

答えは、遠くにはありませんでした。毎日やっていた「下地」の中に、ずっとあったのです。塗装の出来の大半は、塗る前の下地で決まる。自動車塗装が何十年もかけて磨いてきたこの原則は、そのまま3Dプリントの積層痕にも効いた。縞を消すのは、塗料ではなく、研ぎだったのです。

量産品と、見分けがつかない。
金型を使わずに、金型で成形したような顔をつくる。

試作の一個も、量産の千個も、同じ品質で。それは、一点を美しく塗る技術と、数を均一に仕上げる技術——その両方を持つ、量産塗装職人にしかできない仕事でした。あの空白に、ぴたりと嵌まる形が、ようやく見つかった瞬間でした。

FIG.04
見分けがつかない艶の車体
量産品と、見分けがつかない。INDISTINGUISHABLEPhoto: avenir_visuals / Unsplash
CHAPTER 05

大分から、
あなたの一個へ。

The Return

こうして、山岸塗装は始まりました。大分県豊後高田市の、小さな工房。乗用車のバンパーを6本同時に塗れるブースで、あなたの造形物を、量産品の顔に仕上げます。手のひらサイズの小物なら、郵送の送料はごくわずか。地方の工房であることは、もうハンデではありません。

企業トップへの最終プレゼン。展示会。クラウドファンディングの一枚の写真。あるいは、金型を作らない少量生産の、初回ロット。「絶対に外せない一個」が、世の中にはたくさんあります。その一個を、量産品と見分けがつかない外観に仕上げること。それが、この工房の仕事です。

本当のことを言えば、この物語がどこまで劇的だったかは、大した問題ではありません。大切なのは、いま目の前にある造形物を、どこまで美しく仕上げられるか。その一点だけです。下地に、誠実に。——それが、山岸塗装のすべてです。

FIG.05
夜に艶めく車体
大分から、あなたの一個へ。THE BEGINNINGPhoto: aaronburden / Unsplash
信之PORTRAIT — COMING SOON
MESSAGE — 代表挨拶

「見えなくなる仕事」に、
誇りを持っています。

私は、塗装職人です。長く家電の量産塗装に携わり、来る日も来る日も、同じ色を同じ艶で塗ってきました。その中で身についたのは、「同じ品質で、数を仕上げる」という、量産の精度です。

3Dプリントの世界に足を踏み入れて分かったのは、この技術を必要としている人が、たしかにいるということでした。造形はできる。でも、量産品のように美しく仕上げる最後の一歩で、みんなが困っている。だったら、私がやろう。そう思って、この工房を始めました。

塗装の出来は、塗る前の下地で決まります。研磨し、埋め、また研ぐ。仕上がった塗面には、その苦労は一切見えません。見えなくなるからこそ、そこに手を抜かない。それが職人の矜持だと思っています。

あなたの大切な造形物を、量産品と見分けがつかない外観に。その一個に、私の持てる技術のすべてを注ぎます。どうぞ、安心してお預けください。

山岸塗装 代表 / 塗装職人山岸 信之

物語の続きは、
あなたの造形物で。

「絶対に外せない一個」を、量産品の顔に。まずはお気軽にご相談ください。

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